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憤怒

「絶望」よりも「怒り」という感情のほうがよっぽどいい

憤怒

怒りという感情に身を任せて・・

親からのメールにようやく「我」に返ったYUTARO。

彼女のほとんどは嘘で出来ていたのである。

もともと、事あるごとに「嘘つき」だと思ってはいたが、まさかここまで酷い女とは気がつかなかった。

 

「どうしてこんなにすぐにバレる嘘をつくのだろうか?」

 

残念な気持ちと共に無気力な感情に苛まされる。そして遅れて、訪れてきたのは「怒り」の感情だ。それは憎しみに近いかもしれない。

もともとは怒りに対しては鈍い。そして怒ったとしても、すぐに忘れてしまうタチだ。

「怒り続けるのはものすごい体力がいるし、時間のロス」であるという考え方なのも大きい。

そんな俺も怒った。

こんなに強烈な「怒り」を覚えたのは悪質な出会い系業者からの「架空請求」にまんまとハマった時以来だ。

 

妊娠が発覚して、産むと決めたときから、俺は俺なりに真剣に彼女と向き合ってきたし、尽くしてきたつもりだ。

彼女(タヌキ女)と別れ、女性の連絡先を全て消去した。長い間、生活の一部だった「出会い系」もことごとく絶った。

クズにしては上出来だ。

長く続いたこの日記も順調に最終回を迎えようとしていたわけである。そんな俺の、心を大きな裏切りがぶち破った。

 

「もう絶対に信用はできない!コイツとは一緒には住めない!」

 

怒りは次々と連鎖していく。

大阪子の存在は嫁というポジションから「不信」、「あきれ」の対象へと変化した。

 

そして「大阪子と結婚はしたくないわ」にたどり着く。

 

芽生え始めた愛情はあっさりと崩れ去った。

俺は、「ああ・・嫌いになる時は一瞬なんだな・・」そう思った。

「1ヶ月間の実家に帰っていたはずの間、本当はどこで誰とすごしてたの?」という思考にすら至らなかった。

そんなことは、もうどう良くなってしまった。

彼女にはもっと大きな嘘が隠されているに違いない。それを知るのは恐怖でしかない。

これ以上掘り下げれば掘り下げるほど、自らの「傷」も深く、大きくなっていくに違いなかった。

精神がこれ以上壊されるくらいなら、あえて「見ない」ほうがよかった。

 

再び燃え上がる疑念!

ただ、大阪子が妊娠しているのは「本当」だ。

産婦人科にも付き添ったし、母子手帳という「お墨付き」も存在している。

しかし、大きな疑念がYUTAROを襲った。

 

「彼女のお腹の子が本当に俺の子なのか・・」である。

 

妊娠が発覚した当初に抱いていたその「疑念」は一時消えかかったが、再び大きく燃え始めたのである。

とにかく、お腹の子が「本当に自分の子なのか」はハッキリさせておかなければならない。彼女の場合、それすら「嘘」の可能性があるからだ。

そして、自分の子であれば、なんとしてでも引き取るつもりだ。あんな女には渡せない。これから強く生きるのだ。

 

と・・まあ・・文章するすると恥ずかしいくらいに、とにかく頭に血が上っていたと思う。

あの頃の俺に言葉をかけることができるなら、

「まあ・・糖分でも取って落ち着け!」と言いたい。

しかし「絶望」というどうしようもない感情と付き合うくらいなら、「怒り」に身を任せていたほうがよっぽどエネルギーにあふれている。

まだ、怒っててよかった。もちろん当の本人とは「音信不通」なので、ぶつけるところはなかったけど。

 

そして、様々な嘘を知ったあの日から一週間ほど経った頃、ようやく彼女から連絡が来たわけである。

「おはよう!新居はどうかな?」

・・て、てめえ!一通目からそれだった・・・。

 

続く➡音信不通の彼女から「怪文書」が届く