大阪到着!初アポ!でも台風中デートするのはアホ。
豪雨と暴風の中をひた走っている。
ずっと台風の北東を走っているという状況だ。
このままだと、大阪あたりで台風さんにぶつかる。
兵庫県に入り、加古川バイパスを降りると、次は超絶渋滞にハマった。
あたりは暗くなってきた。嫌な予感しかしない。
「もう高速乗っちゃお!」
懐は痛むが、デートの時間に間に合わなかったら、台風の中わざわざ大阪まで行った変態の誕生だ。
台風の運転にもう限界!
バババッババババ!
フロントガラスを叩く音が激しくなる。それでも渋滞の少ない、高速道路の快適さに目から鱗だった。
阪神高速へつながる。背の高いビルがどんどん増えていく。もうここは神戸市だ。
大阪到着。今日のデートのお相手は?
「おわあああ!都会だああ!」
発狂しながら、突き進む。
そして、あっという間に大阪へ到着・・。なんとかアポには間に合いそうだ。
ということで、今日の相手の紹介をば。
名前:破天子
年齢:20代後半
出会ったサイト:ワクワクメール
知り合ったのは2か月前。台風の日にアポをしなければならない運の悪い女の子。顔は化粧が濃いめのキツめ。少しヤンキー系に見えないこともない。
「ああ・・なんか大阪人っぽい。」と顔だけで納得してしまいそうな感じだ。好きな人は好きな顔だろう。キャンセルされるかもしれないので説明は適当。
いっそキャンセルになれ!
午後7時。予約しておいた難波のホテルにチェックイン。台風のさなか、実に約16時間の車の旅であった。(休憩含む)
「ああ・・ああ・・」
ゾンビ状態になりながら、すぐさま部屋へと向かう。そしてシャワーを浴びようと帽子と服を脱いだ。
「なにこれ?頭皮が脂で・・ベタベタやん・・。尾道ラーメンのせいか!尾道ラーメンのせいかアア!」
面倒なのでボディーソープで、頭からつま先、ケ○の穴まで泡立てる。
シャ――!!
(この泡とともに疲れも一気に流してくれたらいいのに・・。)
俺はタオルで水滴をふき取ると、一糸まとわぬ姿のまま、ベッドへと倒れ込んだ。シーツの冷たい感覚が心地よい。このまま眠ってしまいたい。
この旅で結果を残すために、2か月前からダイエットを決行してきた。体重は落ちたが、食事制限のせいで体力も落ちてしまった。こんなことなら筋トレで絞っておけばよかった。
「アポ行くのめんどくせえ・・。もう雨に濡れるのヤダー!」
待ち合わせは午後8時から。大阪への台風の最接近は午後9時すぎらしい。
「このままキャンセルしよっかなあ・・。」
前回の全国旅から3年間の月日が流れている。オッサン化による体力と積極性の劣化は著しい。ゴロゴロとベッドと戯れながら、時間は過ぎていく。
ピコン!LINEが入った。
暴風の中やってくる強い女
破「風がすごいね!向かってるから、もうちょっとでつくで!」
・・・向かってる?この雨の中を?彼女は律儀に約束を守ろうとしている。台風の中、自らの危険を顧みずに。
「俺も・・ま、まけてらんねえええ!」
パンツを履いた。服を着た。帽子も被った。傘も持った。
「よおおおおし!記念すべき初アポだ!」
俺は、待ち合わせ場所へ向かうべき、ホテルを飛び出した。
ビュウウオオ!バサッ!一瞬でビニール傘が逆さをむいて折れる。
「ひぇええ!帰りてえ!」
俺の心も折れかけていた。
男らしいエスコートは大阪の女を参考にしろ!
俺は待ち合わせ場所へと急いだ。風雨を避け、傘をこれ以上失わないために、地下街の「なんばウォーク」をチョイス。
迷いながらも待ち合わせ場所「なんば駅」到着
(あれ?こっちで良かったっけ?)
なんばウォークはほとんど直線の地下街なのだが、焦りからちょっと迷う。
(えっと・・御堂筋線のなんば駅だよな。)
JR難波駅から四つ橋線のなんば駅の誘惑をかわし、御堂筋線のなんば駅・・うーんややこしい。地下は苦手だ。
破「18番出口のコンビニの前におるから!」
18・・18。駅看板の案内をたどって進む。あった!これだ!コンビニの前でスマホを片手に持って眺めている女性が一人立っている。
(あれか?・・いやきっとあの人だ。)
金髪ヤンキー系の「濃い」女
白い短めのスカートに、Gジャンを羽織っている。夜のお仕事系のファッションという印象だ。金髪に近い、明るい髪の色は、破天子からもらった写メで見た通りだった。
(・・遠目で見ても、濃い。)
「着いたけど、破天子さんって、Gジャンに白のスカート?」
とりあえず様子を見でLINEを送ってみる。すぐに既読になって、返事が来た。
破「そうやで~。」
確信を得て、俺は白スカートの彼女に声をかけた。
「どもども!お待たせしました~。」
破「YUくん?はじめまして~。」
近くで顔を見ると、やはりかなり化粧が濃いことがわかる。
太く引かれたアイラインが、湿気でにじんでいる気がする。すっぴん顔はどんなだろうか?
強引だけど頼もしい彼女のエスコート
「てか台風すごいね~。どうする?地下でお店探す?」
破「うーん。道頓堀に美味しい串揚げ屋があんねん。」
おいおい・・外は暴風やぞ?
「あんねん・・と申しますと?」
破「そこいこうや。YUくんにも食べてもらいたいねん。」
おお・・さすが大阪人。
優柔不断よりも即決が良い。
優柔不断に「どこ行こうか?」なんて迷うよりも、「この店に連れて行きたい」と言ったほうが男として頼りがいあるもんね。
破天子は大阪人らしい「せっかちさ」を持ちつつも、「決断の速さ」を持つ。頼もしい。そして連れていくお店をチョイスしてくれるあたり、きっと気の利く女なのだろう。
女性の立ち居振る舞いを参考にするのは初めてかもしれない。それに「○○にも食べたもらいたい」ってのは心地の良いフレーズだ。今度から使っていこう。
ビュオオオ!地下にいてわからなかったが、やはり地上は台風まっしぐら。道頓堀の街も、多くの店が閉まっており、ネオンも人もまばらだ。
ひっかけ橋のあたりにも、うっとおしいほどの、客引きもいない。歩いているのは、中国人や韓国人の観光客ばかり(と思われる)。
なんども来ているが、こんな寂しい道頓堀は初めてみた。傘が折れないようにしながら歩くが、斜めから吹き付ける雨にどんどん服は濡れていく。
台風で店が営業してない!
破「えーっと・・こっちやな。」
「はい!」
破「YUくんもうすぐやで!がんばって!」
「はい!姉さん!頼もしいっす!」
破「あかーーん!閉まっとるやんけ!」
残念ながら串揚げの店は、閉まっていた。
「終わったーw」
これも台風の影響だろうか。そもそも台風の日は外に出てはいけないのだ。
心配になっても、田畑を見に行ってはいけないのだ。俺はがっくりと肩を落として、うなだれる。
破「ほな!お好み焼き食べに行こか?YUくんにも食べてもらいたいねん。」
「はい姉さん!頼もしいっす!抱いてくれてもええんやで?」
破「YUくん。おもんない(面白くない)わそれ。」
そして俺達は「ふりだし」に戻る。さっきと違うのは服が濡れているかどうかだ。
ミシュランにも載った大阪の名店「味乃家」のお好み焼きが旨い!
(・・姉さん。背中はワシが守りますんで。ワシに預けてつかあさい。)
二人は大阪ミナミの街を、暴風雨に立ち向かいながら、速足で歩いた。もうズボンはビチャビチャだったが、それも悪くない。俺たちはもうチームなのだから。
破「YUくん着いたで~♪」
「おおここか!」
たどり着いたのは味乃家(あじのや)というお好み焼き屋。俺は姉さんの背中を必死で追い続けていただけなので、どういうルートで来たのかはよくわからない。
破「わー、太ももがビッチャビチャ!」
そう言ってバックから取り出した、タオルでぬぐう彼女。
(むむ・・。これは?)
よく見ると、美味しそうな太腿である。
行列のできるお好み焼屋。台風でも人が多い。
味乃家(あじのや)に入る。思った以上に人が入っていた。彼女に聞いてみると「今日は少ない」らしい。普段はもっとたくさん人が並ぶとの事。
店員「すんません。今日は午後10時に閉店なんですが・・。」
破「それって台風のせいですか?」
店員「そうなんですよ~。どうされます?」
「入ろう。このいい匂い嗅いだら・・腹が減ってダメだ。」
ということで入店。今は20時30分過ぎ。閉店まで一時間半もあれば充分だろう。それに俺には、これ以上店を探す気力も体力も残っていない。
俺&破天子「かんぱーい!!お疲れ~!」
ビールで乾杯。グビグビグビ!プハー!うめえ!
「ガクガク・・あれおかしいな・・。ブルブル・・。」
ジョッキはキンキンに冷えている、体が濡れているせいで、寒気が止まらない。鉄板に火を入れてもらうと、幾分震えも収まる。
店員さんが焼いてくれたよ。
そして店員さんが、手際よくお好み焼きを焼いてくれる。
わざわざ各々の席まで来て、テーブルの鉄板でお好み焼きを焼いてくれる。(全部じゃなかったかも?)
これってかなり大変そうだ。各テーブルの焼き加減を常に把握していないといけない。ジュウジュウという音とともに、なんとも言えない香りが俺の嗅覚を刺激する。
「あらあらまあまあ!きつね色になっちゃって・・美味しそう・・。」
破「YUくんまだやで!」
俺はお腹を鳴らしながら、お好み焼きが焼きあがるのをじっと待った。
感動の旨さ!お土産にソースも購入してご馳走様
※記念に一枚。破天子に撮ってもらった。お好み焼きが焼き上がる。その頃にはアルコールが体を侵食しはじめていた。今日は長く持ちそうもない。
「パクパク!うめえ!うめえっす!ムシャムシャ!」
濃厚なソースが熱々のお好み焼きに絡んで、涙が出るほどに旨い。
破「ここ美味しいやろ~。ミシュランにも乗ったんやで?気に入ってくれてよかった。ビールのおかわりは?」
「もちろんいる!」
姉さん・・めっちゃええやつやん。久しぶりに聞く、関西弁にも癒される。
まさかのデート中止宣言。台風で遊べない。
破「あれやな・・今日はあかんな。」
「なにがっすか?姉さん。」
破「台風のせいで遊べるって状況じゃないやん?」
「・・・うーむ。確かにそうですね。(早く気づけよw)」
破「今日は、お好み焼きたべたら、帰ろっか?」
「・・・え?(泣)」
彼女に会って1時間も経っていないのに、まさかの試合中止宣言。
だが、無理強いはできない。今日は普通の雨じゃないんだから。
それにデートは一人では成立しないのだ。
思いやりを欠いて、相手の機嫌を損ねればそこで試合は終わる。
「・・残念です。」
破「YU君さ。」
「??」
破「明日は時間ある?」
「夕方くらいまでなら。」
破「ほな一緒にどっか行こうや。天気よくなったらやけど。」
「あ、阿倍野ハルカス行きたいかも。」※この頃は阿倍野ハルカスが大阪にできてまもない頃だった。
破「よし。そこいこう。」
「OK。」
デートは短かったけど、名店でお好み焼きを食べることができたのはラッキーだった。ご馳走様です。
味乃家のお店情報
味乃家(あじのや)
食べログ:https://tabelog.com/okinawa/A4701/A470101/47009228/
住所:大阪府大阪市中央区難波1-7-16
TEL:06-6211-0713
美味い度:★★★★★
本場大阪のお好み焼きが味わえる人気店。普段はかなり混んでいるらしいが、今回は台風の影響もあってすんなり入ることができた。(ラッキー)
ミシュランにも掲載された実績があり、お好み焼きだけじゃなくメニューもバラエティに富んでいる。店員さんがテーブルまでやってきて、眼の前で焼いてくれるので「一番美味しい状態」で提供してくれる。
濃厚なソースが絡んだ、「フワッカリッ」のお好み焼きはさすがの一言だ。味乃家特製のお好みソースがお土産で買えるので、ぜひ買って帰ろう。
明日も会ってくれるいい女
店員さん「~おおきに~♪」
最後に味乃家名物の「お好みソース」を購入して、店を出る。
「満足、満足。」
外に出ると皮肉なことに雨は収まっていた。
破「ほな、あしたの午前10時ね。」
「オッケー!今日はたっぷり寝て明日に備えます。気を付けて帰ってね。」
破「ありがと。バイバイ。」
さっぱりとした口調で、破天子は駅の中へと入っていく。
俺はその背中が見えなくなるまで、彼女を見送るのだった。
アラームかけ忘れて無事寝坊。許されると思ったら大間違い
「ああ・・疲れた。一日目終了・・。」
気が抜けたせいでホテルへの帰り道がわからなくなる。スマホのGoogleMapさんに問いかけ、案内してもらいながらホテルへの道を辿る。
部屋に入り、ベッドに倒れ込むと、すぐに瞼が重くなった。
「夜景がキレイやなあ・・」
部屋の灯りも消さないまま、俺は夢の世界へと落ちていく。
「ZZZZ。」
「ZZZZZZZ・・。」
「!!!!」
ガバッ!俺はベッドから飛び起きた。
「え?今・・何時?」
うっかりアラームをかけ忘れていた。旅先で寝坊することは、たまにある。沖縄ではチェックアウトの時間を大幅に過ぎて眠ってしまったこともある。
急いでスマホを手に取るが、電源が落ちている。
「ぬあーー!充電するの忘れた!」
枕元にあるホテル備え付けの時計を確認した。午前9時半を回っている。
起きたらの待ち合わせ30分前
「おいおい嘘だろう?」
破天子との待ち合わせ時間は午前10時だ。
(アカン!アカン!!)
とりあえず顔を洗って、歯だけでも磨かなければ。(エチケットとして)
その間にスマホを充電器のケーブルに差し込んで、少しでも充電しておく。壁に激突しながら、洗面所に向かって、洗面台の鏡の前に立つ。
「ぞ、ゾンビ?」
遅刻ギリギリでも、エチケットは大事
酷い顔だ。目の下には、クマがくっきりと浮き出ている。
ジャバジャバと顔を洗い、濡れたままの顔で歯ブラシを手に取った。
口を開けると、前歯にはびっしりと昨日食べたお好み焼きの青のりが付いていた。
「え?俺ずっと青のり付いてたの?恥ずかしいい・・。」
このまま行けば「歯を磨かない不潔な人」扱いされるところでだった。
・・危ない危ない。
あくせくと服を着替えていると、タイミング悪く、やっぱり模様してくる。
「ウン神」様のご到来だ。
ブリュリュリュリュリュリュ!
こんな時に限って大漁だったりするわけだ。
ヤンキー女を待たせたら・・殺される?
なんとか、午前10時数分前に部屋を出た。
「あ・・どう見繕っても・・ダメだわ。」
待ち合わせには、到底間に合わない。
このままチェックアウトして、駐車場まで車を取りにいけば午前10時だ。
「ごめん、寝坊しちゃった。今から迎えに行くと10時20分くらいになるかも?すいません。」
とりあえずLINEで謝罪しておく。
20分で待ち合わせ場所に着く根拠はなく、せっかちな大阪人にとって、20分の遅刻は致命的だったりする。
破「いいよ~なんなら私がそっちまで行こか?」
「・・良いんですか?」
破「うん。難波までいくわ。」
「・・昼飯おごります~。」
破「気い使わんでええよw」
神である。破天子の思いやりに助けられた。そして、もう寝坊はしないと誓うのだった。こんなことは何回も許されるわけがない。
キュキュキュー!!タイヤを鳴らしながら、立体駐車場を下っていく。
(急げ!急げ!)
駐車場ゲートのバーが上がり、俺はミナミの街へと飛び出した。
あべのハルカスの展望台料金高い!というケチ達。
昨日の嵐が嘘のように、空は晴れ渡っている。台風一過の少し冷たい空気が心地よい。
「もうすっかり秋ですねwうふふ。」
なんて言ってる余裕はない!通り沿いで破天子が待ってくれている。
(あれかな?あれだ。)
破天子を見つけると、ハザードランプを点滅させて、車を停車させる。
年下に「姉さん」と言ってはいけない
破「おはよう。」
「おはようございます。あの・・すいません!わざわざ来てもらっちゃって!」
破「いいのいいの。今日は暇やったし。」
「姉さん。ありがとうございます(泣)あんさんええ人や。」
破「あのさ。姉さんっていうのやめてくれへん?うちのが全然年下やし。」
「はい!以後気をつけます!では安全運転でいかせて頂きます。姉・・破天子さん。」
あべのハルカスへ。見違えた天王寺界隈
破「うん。ドコ行くんやっけ?あ、あべのハルカスか。」
情報が古いナビなので、阿倍野ハルカスの情報は登録されておらず、とりあえず行き先を、「天王寺駅」にセットする。
「なんどここに来てたって~♪はい!」
破「大阪弁は上手になれへんし~♪」
「楽しそうにしてたって~♪ほい!」
破「あなた以外に連れはおれへんのよ~♪」
俺&破「近そうでまだ遠い~あべのハルカス~♪」
二回目の「大阪LOVER(替え歌バージョン)」を熱唱しながら、たどり着いたのはあべのハルカスだ。ちなみに「阿倍野ハルカス」じゃなくて、「あべのハルカス」ね。
そびえ立つ日本で最も高いビル(高さ300m)は、遠くからでもすぐにわかる。おかげで迷わずにあべのハルカスに到着することができた。
「これが天王寺?嘘や・・。」
この辺りに来たのは、ずいぶん昔のこと。俺の知っている天王寺と、今の天王寺は大きく変貌していた。
以前の天王寺は独特の「アンダーグラウンドな雰囲気」があったのだが、再開発によって、町並みがずいぶんキレイになっている。
料金ケチって展望台に登らない人。俺達以外にもいる?
「はえ~見上げるとでっかいな!首が疲れる。」
とりあえずスマホで一枚ぱしゃり。中に入ると、・・なんかただのデパートだった。
「えっと展望台は・・え?入場料だけで1,500円もかかるの?」
破「高いなあ~。もったいないからやめとこや。大阪は高いビルたくさんあるし。」
彼女の謎理論によってあっさり却下。(行っとけばよかったと後で後悔。)
ハルカスの地下のフードコートで、軽く昼飯を食う。
今回の話とは全く関係ないのだが、あべのハルカスの展望台では日本一高いビアガーデン「ビアサンビャク」が4月28日~10月28日まで開催されている。これはめっちゃ行ってみたい。
「うーん。目的達成しちゃったしなあ・・この後どうする?天王寺動物園でも行く?」
破「いや・・あの動物園はええわ。」
あべのハルカスで展望台に行かないとなるとやることがない。わざわざウインドウショッピングするのも気が引ける。
そうだ京都へ行こう
「なんなら京都でも行く?」
破「京都?ww今から?ww」
「せっかくなんで観光みたいな事したい。」
破「おおーおお。ええけど・・遠いで?時間かかるで?」
「そんなん近所やで。」
俺の謎自信によって、デートの舞台は京都へ変更。少し無茶な気もするが、それでこそ出会い旅だ。
大阪から京都へ、滞在時間三時間の弾丸ツアー
さて京都へ行こう。久しぶりに関西に来たのだ、日本が誇る観光地の京都は外せない。
それに昨日はたっぷり眠ったおかげで体が軽い。
(やべ!アガって来ちゃった!)
弾丸ツアーに二人ともテンションが高い。
自分を追い込んでいくスタイル。
ただ、今日はこの後、金沢市まで行かなければいけない。京都へ行って、大阪に帰って、んで石川県へGO・・。
頭の片隅でその距離と、移動時間を計算しようとするが、凄くヤバそうなので考えるのを止めた。
車は高速に乗って、北へと進む。
大阪から50キロほど距離を、およそ一時間で京都市に到着。
京都到着。休む間もなく清水寺観光
「どこへ行こうか・・。」
時間に余裕があるわけじゃない。やはり総合力でみて「清水寺」をチョイスする。
「よしタバコで一服したらいきまっか!」
破「うん!」
駐車場に車を止めて、坂道を登っていく。
破「お土産屋さんいっぱいあるけど?見ぃへんの?」
「先に清水寺に行って、帰りにお土産屋みたらええやん。」
行きの道中にお土産屋を見てしまうと、帰りも含めて最悪二倍の時間がかかる。焦りがストレスを招いて、いい雰囲気をぶち壊してしまうかもしれない。
アホな俺なりに、一応計算をしている。スケジュール管理はザルだけど。
「はあはあ・・なかなか坂キツイなあ。ごめん汗拭いてくれへん?」
破「うーん。断る。ほら清水寺見えてきたで!」
汗だくになりながら、清水寺にたどり着く。
「やっぱり混んでるなー。」
人混みに紛れながら清水寺の境内の中を進んでいく。
破「うわ・・高い~。下を見るとちょっと怖いわあ・・。」
そう言って清水の舞台で破天子は俺の腕をギュッと握った。
(あれれ?姉さん・・可愛いとこあるやん。)
錦古堂(扇子屋)で何故か扇子を買う。
ちょっと胸と股間が熱くなる。清水寺にお参りした後は、お土産屋巡りだ。
「おお・・この扇子、センスええやんけ。」
破「帰りにダウンジャケット買ってや・・。ブルブル。」
店員「お客様~この扇子は当店でも人気が高い~・・」
何やら忙しくなってきたぜ!やり手の店員さんによって眼の前にセンスがたくさん並べられる。
店員さんの熱心な勧めで、俺、なぜか扇子を購入する。(結構高かった。)
この時買った扇子。今でも部屋を明るくしてくれている。
破「っちょ!wなに扇子買っとんねんw飾るの?」
「せっかくだから京都みやげ・・。でも俺・・なんで・・扇子買ったんだろ?」
破「・・返品したら?」
「それは・・なんか人として恥ずかしい。」
破「YUくん意外と小心者やな~wアタシが返しに行ってきたろか?」
「いや・・やめて、もういろいろ恥ずかしいし、アナタのことまた姉さんって呼んでしまう。」
破「それは勘弁やな。」
「せっかくなんでこの扇子大事に使うわ。破天子との京都のデート記念として。」
破「YUくんオッサンなのにカワイイとこあんなあw」
大阪へUターン。
(あれ・・もう午後3時すぎか・・。もしかするとアポに間に合わないかも。)
大阪に帰って、すぐに金沢に移動、今日のアポは午後8時からだ。
(ヤバい・・。)
京都観光は思ったよりも、無謀だった。これから大阪に戻るのは凄まじく面倒くさい。
大阪か?金沢か?二つのアポを天秤にかけるゲス男。
大阪に戻ってから金沢に行くとなると、高確率で遅刻する。
「俺、このまま金沢に行くから、京都駅から電車で大阪に帰ってくれる?電車賃払うからw」
・・なんてことは、絶対に言えない。ヤンキー彼女の事だ。怒らせたら、嫌われるだけじゃ済まない。滅されるだろう。
ちゃんと相手を大阪まで送りとどけなければ、ハンドルを握りアクセルを踏み続ける。これは命綱だ。
優柔不断な選択肢に迷う
大阪に向かう途中、俺は迷っていた。今なら「選択」できるからだ。
- 「遅刻してでも金沢に行く」
- 「大阪でもう一泊して彼女と過ごす」
今、眼の前に二つの選択肢が転がっている。自分の優柔不断さが辛い。
そうすれば、破天子とまだ一緒にいることができる。今日一日でずいぶんと仲良くなったし、このままお酒が入れば、高確率でチョメチョメできるんじゃないか・・とも思っている。(ゲス)
一期一会の出会い旅だ。せっかくのチャンスは逃したくない。
大阪を選ぶと、金沢でのアポはドタキャンになる。金沢で予約しているホテルもキャンセルだ。当日キャンセルはキャンセル料も請求される可能性が高い。
とはいえ、今から、金沢のアポに間に合わせるには、高速道路を、ぶっ飛ばして行かなければならない。高速代を考えると、ホテルのキャンセル代よりも高くつくかもしれない。体力的にも相当な負担が強いられるだろう。焦りは大きなストレスと事故のもとになる。
(金沢行きたくねえ・・。大阪から金沢とかアホかよ?こんな無謀な日程組んたのは誰だよ?)
そのアホは紛れもなく俺だった。気持ちは「大阪もう一泊モード」へとぐっと傾いていく。
ドタキャンされるのは辛い。
(待て待て!ちょっと待て!本当にキャンセルしちゃっていいのかい?)
何度も味わったことがあるが、「当日キャンセルはめちゃ辛い。」のだ。
それに因果応報という言葉もある。俺は信心深くはない。
けれどキャンセルすると、次は他の誰かにキャンセルされる気がする。
「大阪に戻ったら飲みに行こうぜ!」
俺は欲に塗れたこの言葉をグッとこらえた。
次のデートを取り付ければいいじゃない。
「あの・・来週のさ・・週末とかって予定空いてない?」
破「・・うーん。ちょっと待って。」
破天子がバッグから手帳を取り出して、予定をチェックしている。思ったよりもマメな性格のようだ。
破「来週の金曜日なら夜空いてるで。」
「おし、じゃあ金曜日に、また飲みに行こうぜ。」
破「うん。わかった。」
「今日、寝坊しちゃったから、埋め合わせさせてw」
破「もう!そんなん、ええのに~w」
姉さん・・本当にいい女や。俺は次回のチャンスにかけることにした。
大阪市へ入り、彼女の家の近くにたどり着く。
「今日はお付き合い頂きありがとう。めっちゃ楽しかった。」
破「ウチも楽しかった。ほな来週やね。」
「おう!」
金沢まで300キロ。オワタ\(^o^)/
手を振って見送ってくれる彼女を、横目に車を走らせる。
「現在、午後5時前か。」
ここから金沢市までの距離は・・300キロである。
「アハハハ!絶対に間に合わねえや!」
もう笑うしかない。もしかすると最悪の判断だったかもしれない。