飲んだ後は・・カップルっぽくね。でもヤツが来るの。
「ふう・・飲んだ・・。もう飲めん。」
さっきからそればかり言っている。
これ以上飲まないようにするための言葉。
そして、これ以上彼女に飲ませられないための言葉だ。
そんな言葉で酔っぱらいをアピールしながら、会計をすませて店を出る。
足に力は入るようになったものの、まだ頭痛が続いている。
衛「美味しかったねえ!また来ようよ!」
何時になくハイテンションな衛生女。
「キミほとんどビール飲んでたじゃん。」
衛「そのビールが美味しかったの!」
あの話になってから。彼女と別れたという事を告げてから妙によく喋る。
衛「ねえねえ。」
「なに?」
衛「酔い覚ましにちょっと歩こうよ。」
「え?寒いでよ?」
衛「ちょっとだけだから。」
「うう・・寒い・・。俺・・寒いのアカン子。」
そもそも寒いの苦手なクセになんで北海道に住んでいたのだろう・・?
でも冬が寒いのはどこも同じだ。北海道は部屋の中が暖かいしね。
衛「ほら・・これで暖かいでしょ?」
そう言いながら彼女がギュッと腕を組んでくる。
「お前さんそんなキャラだっけ?」
衛「うるさい!たまには良いでしょ?」照れくさそうに言った。
「あれ?そういうところ・・ちょっと可愛いかも?」
衛「でしょ!でしょ!」
「普段からそうだったらいいのにw」
衛「・・努力します。」
久しぶりに女性と腕を組みながら福岡の中心地を歩く。
薄暗い元大名小学校前を通り過ぎ「西通り」に入ると一気に明るくなる。
平日とは言えまだ早い時間。人通りも多い。
何度も同じように腕を組んだり手を繋いだカップル達とすれ違う。
「なんで俺が避けなアカンねん!その手を離して一列になれ!ク○が!」
いつもならそう心の中で叫んでいるが、スマン!今日は「そっち側」だ。
今度は今度でカップル同士の「どっちが避けるか」的なせめぎあいがある。
(これはこれで・・大変。)
天神西通りを国体道路まで歩いた。左腕だけが妙に温かい。
ギュウルルルル!突然腹が鳴る。
「やべえ・・腹が冷えたかも!」
彼女のぬくもりもこの弱いお腹までは温めてくれなかったようだ。
衛「お腹弱いの相変わらずだねwコンビニのトイレでも借りる?」
「いや・・ここはタクシーで家まで帰ろう。」
そう言って道路わきで手を上げる。すぐにタクシーは止まった。
「運転手さん!とりあえず美野島の交差点まで!お腹痛いんで急いでくれると助かります!」
衛「アハハ!なんで自分を追い込むの?素直にトイレ行けばいいのに。」
「冒険が・・好きなのさ!」
お腹を擦りながら強がってみせる。
衛「なんか最初にウチ来たの・・思い出したw」
そういえば・・あの頃も腹が冷えてたっけ。
衛「ほんとYUちゃんってムード力にかけてるよねw」
ムード力?
ケツ筋を締めた状態で俺に足りないものを淡々と教えられながら家路に着く。
「そこら辺でくつろいでて!トイレ行ってくるから!」
俺は言い放って天国に飛び込んだ。
ブリュリュ!プッシャー!
「・・・ふう。・・元カノが置いていったものとか無かったかな?」
危機を脱して冷静になった俺はそこら辺が気になっている。