それは流れ星のように、突然やってくる。
「え?え?え?なにこれれええええ・・!?」
「あひい!!ち、ち、ちい!?」
俺が見たのは、地井武男の霊はない。
自らの手にべったりと付着した、真っ赤な鮮血であった。
自分の体に流れている癖に、俺は血液を見るのがダメだ。
スーッと血の気が引いていく。貧血モードに突入だ。
(これ?ホントに血なのか?ケチャップというオチはないのか?知らない間に誰かヤッちまったんか?)
なんとか意識を保ちながら自分に問いかける。
(クンクン・・うっ!鉄臭い。)
阿蘇で入った温泉の残り香も含まれているしれないが、明らかに血の匂いだ。
・・これは事件の匂いがする。
(け、ケガか?でもいつの間にしたんだ?酔ってるから痛みを感じなかったとか?)
固まりながら、再び真っ赤に染まった手の平をマジマジとみる、一体どこから流血しているんだ?
(ん?あれ・・?そもそも痛くないんですが・・。血出てない・・。)
こんがらがった頭の回路を一つづつ整理していく・・。もしや・・これは!?
「ちょっと衛生女!こっち・・来て。」
衛「え?サッポロ黒ラベルなかった?」
「いや・・これ見て。」
衛「え!?なにこれ!YU君血でてる!!」
「それが俺じゃ無いみたいなの・・。ちょっといいかな?」
俺は血に染まっていない手で彼女のケツを触ってみる。そして手のひらを確認した。
衛「え?え?もしかして?」
「うん。・・・アウト・・です。犯人はアナタだ。」
衛「まじかああああ!来ちゃったかああ!!」
「そのようです・・。とりあえず目立たないズボンで良かったね。」
衛「ごめん酔ってて全然気が付かなかった・・。」
「どうする?パンツ買っとこか?」
衛「うん・・。ごめんね。わたしとりあえず、トイレ行ってくる。アレは持ってるから。」
「アレ」とはきっと生理用品のことだろう。
俺も一緒にトイレまで行き、手洗い場で彼女の血液を石鹸で入念に落とす。
生理(正確には月経?)という現象、そしてそのフレーズはなんとも男心をガッカリさせてくれる。
でもそれ以上に、突然やってくるから女性は大変なんだなあ・・。
今日ならその気持ちが少しわかる気がする。
なぜか体操服で授業を受けていた同級生の女の子が脳裏に浮かぶ。・・あいつはなんて名前だったっけ?
本日二枚目のパンツ(女性物)をカゴにいれ、ビール二本でごまかす。
そしてレジに持って行った。
店員「いらっしゃいませ~」
(うわあ・・あのオッサン女物のパンツ買ってる!!!)
・・きっとごまかし切れないだろう。
「あと・・ファミチキもください。」
何を思ったか俺はファミチキも購入してしまう。
一刻も早くこの場から立ち去りたいはずなのに。テンパっているのかもしれない。
店「袋・・お分けしますか?」
さりげない気遣い。店員さん良いヤツだわ。
「いや・・一緒で大丈夫です。」
パンツもビールもファミチキもごっちゃにして俺は急ぎ足でコンビニを出た。
コンビニの前にある灰皿でタバコを吸って彼女を待っていると、いそいそと彼女がやってきた。
衛「ごめん!お待たせ!」
「全然。もう大丈夫?」
衛「うん・・。油断してた。レバーとか馬刺しいっぱい食べたからかな?ホテル行ったらズボン洗ってドライヤーで乾かしてみる。」
「うん。それがいいよ。俺ドライヤー使わないしw」
衛「ちげえねえw」
流血戦でどうなることかと思ったが、俺たちの夏休みは平和に終わりを告げた。
そしてもうすぐ秋がやってくる。
次回広島編へ!